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2006年

【Case-19】蓮見やよいの場合



 生まれも育ちも岐阜の田舎町。学校まで歩いて30分、近所の子たちはみんな足が速かった。私もそうだった。マラソン大会ではいつも上位にいた。走るのが大好きだった。でも少し反抗期もあって、中学の部活はみんなが「陸上部に入るんでしょ?」って言うだろうなってわかってて、わざと卓球部に入ったの。でも道具使えないからボロボロだった。

 私は少し変わった中学生だった。私は春に生れたけど夏女。1年の中で夏休みが一番好き。今でも夏が来るとそれだけでうれしくて、夏が終わらないでほしいっていつも思ってる。夏が終わるのが嫌で1年中半袖で過ごしたり、永遠に夏の国に住みたくて外国についていろいろ調べてるうちに、興味が出すぎて世界地図ばっかり見てたり……

 隣の席に日本とペルーのハーフの男の子が座ってたから、簡単な英語でよく話してた。外国語がすごく好きだったから、イタリア語を独学して日本人の同級生にもイタリア語とかで話しかけたり。卒業の寄せ書きに「英語がとても上手でした。でもここはニホンです」って書かれたこともあったっけ(笑)

 家はインターナショナルな雰囲気ゼロ!! お母さんは海外行ったことないし。英語話せる人は誰もいないし。その環境でよく私みたいなタイプが育ったなあって、今でも思う。私が1人で海外行く報告をするたびに、なんて言われるんだろうってビクビクしちゃうくらい。


 岐阜には海がないの。夏休みに毎年家族で海へ行ってて、そういう余韻がいつまでも残ってるんだよね。魚座だからかも知れないけど、海も夏と同じくらい大好き。だから海辺での生活に憧れて鳥羽に住み込んだの。海がもってるいろんな顔を見ているだけで幸せだった。晴れた日も真夜中も、嵐の時も、たくさん見に行ったな。船で大阪から沖縄に行ったとき、船は360度海の世界で陸が見えると不思議だった。自分だけじゃなくて、私たちはみんな海から生まれたんだなって本気で思った。無人島で生活したみたいって夢もあったんだよ。モノに守られてるんじゃなくて自然と暮らしていくような生活。実際は難しいだろうけどね。

 放浪の民の私は別名「地図マニア」。住んで浅い割にはやたら地名に詳しかったりする。だからどこへ行ってもすぐ馴染んじゃうし、前から住んでましたみたいな顔してるよ。図々しいかな? 私は放浪の民。小学生の頃から近所の山の探検したり、ひとりで名古屋に行ったり……。土曜日学校が終わったらバスと電車を乗り継いで名古屋をぶらぶら。親には内緒だからごはんの時間にはちゃんと帰るの。

 消極的な割には頭の中はマセてたから、かっこいい男の子を見つけたらつきあいたいって思って声かけようかと真剣に考えてたわ。でも実行できなかった(笑)。逆ナンの旅!? 早く彼氏つくりたい、できたら違う学校の年上の……な~んて夢見てたけど、彼氏できたのは17歳。自分から告白できない、好きな人の前で固まる、恋愛に対して臆病! 気になる人が10人以上いても行動に出せなかったのです。

 18歳、高校を卒業して三重県の鳥羽、熊本の黒川温泉の旅館での住み込み生活を経て名古屋でのひとり暮らしがスタート。サウナであかすりエステをしてた。怪しい仕事とよく勘違いされるけど、真面目な健康あかすり。お姉ちゃんによく「妹は変わった仕事ばっかりしてる」って言われる。仲居さんも、あかすりを含むマッサージも私には合ってるんだけどね。それは今でも続いている。

 宿からバスで30分のコンビニで立ち見してたグラビア雑誌が最高におもしろかった。私、そのへんの男の子よりもグラビア詳しいから。でも旅館って閉じ込められる生活だから、長くは続かなかった。長期でお願いしますとか言いながら4カ月で辞めた。結局一番やりたいことがわかって、その夢は果たした。東欧への旅をね。17歳のとき放浪ひとり旅が始まった。よくひとりで名古屋とかも行ってたけど、家に帰らないで知らない土地を彷徨う、本当に冒険だった。



 いろんなところに行くと、それぞれの町のいろんな顔に出会える。時報の音の違い。夕方5時の音はカラスの歌? が多いって聞いたことあるけど、うちの地元はただのサイレン。だから犬が遠吠えしてうるさいんだよ(笑)。近所の犬が一斉に鳴くんだもん!! 鳥羽にいたときは、午前10時になると町内放送がかかるんだけど、おもしろくて涙出たくらい。「みなさんにお知らせします。漁協の前にサンマ10本1,000円。欲しい人は取りに来てください」って、鳥羽の方言でおばちゃんがしゃべってて、それ聞くのがすごく楽しかった。

 海女さんの町だから、女の人はみんな強いんだよね。出産2週間前の妊婦さんが海に潜るとか聞いたときはさすがに驚いた。鳥羽はもう、女のパワーがすごい! みんなおもしろい! サスペンスドラマ見てておばあちゃんが「あんな女、はよ殺してしまえ」って言ってたり、しゃべり出したら止まらない。本当に元気。布団のたたみ方も丁寧に教えてくれたわ。「こうしてこうするんじゃ。な、かっこええやろ?」って実演してみせてくれたり。私が漁船に乗りたいって言ったら「船からドボンと突き落としてやるわ」なんて冗談言われたり。

 田舎に働きに行くと、おばあちゃんとの触れ合いが多いし思い出に残ってる。熊本にもおもしろいおばあちゃんがいた。休みの日に同じバスに乗っていて、2人とも気付いてたのに、お互い声かけなかったなんてこともあったっけ。次の日その話をしたら、もう大爆笑。おばあちゃんはいつもごはんを作ってくれてたんだけど、白和えとかすごくおいしかった。私が辞める日にはいもまんじゅうを作ってくれて……。明るいおばあちゃんで大好きだった。怒ってもすぐ笑ってくれた。すごく癒された。

 熊本の黒川温泉は当時は携帯も圏外だった。テレビもNHKしか映らないし、自分の部屋にテレビはないから本当に時代に左右されない毎日。寮は、福岡の2人のお姉さんと3人で6帖くらいの小さい1Rだった。でも、周りに何もないし、3人で住んでて良かったって思った。まだ18歳で未熟者だったから、お姉さんたちにはいっぱい迷惑かけちゃったけど、当時25歳のお姉さんが福岡に帰るときはもう涙が止まらなくてボロボロ。厳しくされてもすごく面倒見てくれて飼い主みたいな存在だったから寂しかった。私本当にその人に会えて良かったって思ったよ。


 青春18きっぷで行き先決めないで適当に電車に乗ってたら夜9時に鳥取駅。お姉ちゃんに「今鳥取にいるから、親に今夜帰れないった言っといて!」って電話した。その夜は出雲まで行って、ホテル代はケチってキレイなトイレで朝を待っていた。長い夜だったな。照明がセンサーだったんだけど、電気の音とかがやけに響いてドキドキするの。とりあえず補導されないようにしなきゃとか、夜中に外にいるっていうことがもう緊張しちゃうの。田舎っ子だから!! 真っ暗な中で車が1台走り抜けていくのを見るだけで、いろいろ妄想するんだよ。こんな時間にどこに行くんだろうとか、どんな人が乗っているんだろうとか……。ダンプカーとか走ってるとすごくキレイ。ドラマティックなんだよ。

 私のひとり旅は19歳で日本全国制覇、そして海外へも。実際に行ってみると最初はしゃべれると思っていた英語も出てこないし、食べ物も微妙、いろんなものに戸惑いがあった。私、イタリアに留学したいっていう夢があったの。でも旅行だけでもかなり大変だし、住むなんて考えられなかった。それよりドイツの方が肌に合うとか思ったし。

 当時は海外も苦労モノだったけど、今じゃバルセロナで無感動。前も来ましたよ、みたいな顔して歩いてた。慣れたんだわ。だって20カ国行ったんだもん、全部ひとりで。たまに現地の友達ができて一緒に周ったりもしたけど。ギリシア、キプロス、ロシア、アイスランド、ブルガリア、チェコ……。安宿、スーパー、散歩、ミュージックチャンネル、観光は実は興味なくて、現地人みたいに過ごすのが主流。あとは写真を撮ること。人なつっこい民族の国が一番楽しめる。今のところギリシアの田舎町がベスト。それに近いキプロスも印象深い。今、週一でスペイン語のスクールに通ってる。スペインは13歳のときから好きだった国。これからディープに旅したいところのひとつ。他にも行きたい国はありすぎて書けないけど、3つだけ書き出すなら、イエメン、ウズベキスタン、モーリタニア、かな。最近仕事を変えたんだけど、タイ古式マッサージのお店で働いててタイ人の子といつも一緒。タイでマッサージの資格を取ることも目標にしてるよ。

 今の生活は、本当にやりたいことをやってる。まだ100%じゃないけど、けっこう毎日ギラギラしてるよ(笑)。夜なかなか眠れないこと多いもん。欲しいものを掴み取るような日々かな。もちろんそんなに甘いもんじゃないけどね。だからこそギラギラなんだよ。波乱万丈っぷりは抜けないけど、すごく自分らしく生きてる。本当、生きてるって感じる! 神に感謝ネ!



 彼女はボクのホームページから応募してきてくれた、自分でも話してる通りの、まさにギラギラパワフルな女の子だ。最初の打合せでお互いのスケジュールがちょうど良いタイミングで空いたので、すぐに撮影開始。国内や海外のいろんな所で過ごしてきた経験も伴い、肝っ玉が座っている。これまでにも何度かモデルっぽいこともやった経験があるらしく、身体が柔らかい。それに、こちらからあまり注文(本来あまり指示しないのだが)をしなくてもカンが良いので、とても撮りやすかった。今度撮影する時には、終了後に是非タイ式マッサージを施してもらいたいものだ(笑)。今後の活躍に期待したい。2日目の撮影ではキャノンの50mm F1.4を中心に、今回もTS-E 45mmを使ってみたが、うん、面白い。あと数回はもっといろんなパターンを試してみたい。

使用機材
Canon EOS 5D
EF 16~35mm F2.8L USM
TS-E 45mm F2.8
EF 50mm F1.4 USM
EF 70~200mm F2.8L IS USM
Sandisk Extreme III




HARUKI
(はるき)1959年広島市生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。広告、雑誌、音楽の媒体でポートレートを中心に活動。
1976年 個展「FIRST」を皮切りに、多数の個展、グループ展を開催。1987年朝日広告賞グループ入選、表現技術賞受賞。1991年パルコ期待される若手写真家展選出。コラボ作品がニューヨーク近代美術館に、「普通の人びと」シリーズ作品が神戸ファッション美術館に永久保存。
2005年に個展「Tokyo Girls♀彼女たちの居場所。」を東京 渋谷、2006年に京都で開催。

2006/08/21 00:00
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