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【写真展リアルタイムレポート】三好和義「楽園写真展 ハワイアンスピリッツ」

〜αとサイバーショットで撮った、見たことのないハワイ
Reported by 市井 康延

愛用のサイバーショット DSC-W200を手にした三好和義さん。後ろの展示作品が古代フラを撮ったもので、写真展の巻頭を飾っている
 三好和義さんがハワイを撮る。ハワイは日本人にとって最も身近な西洋文化が感じられる観光地であり、知り尽くした感のある場所だ。ハワイのどこに、今まで以上の「楽園」的なイメージが発見できるのかと、疑念を抱く向きも多いはず。

 会場に行けば、それが浅はかな杞憂であったことがわかる。そこにはハワイでありながら、これまで知らなかった世界が広がっているのだ。それは刺激的で、まさに写真的な快感に満ちている。

 三好さんとしても「これまでで最大規模の写真展になった」という。展示作品はすべてデジタルカメラで撮影した新作だ。この写真展は見逃さないほうがいいかもしれない。

 「ハワイアンスピリッツ」は日本橋三越本店新館7階ギャラリーで、6月19日(火)〜24日(日)に開催される。開場時間は10時〜19時30分(最終日は18時まで)、入場は閉場30分前まで。入場料は一般・大学生800円、高校・中学生600円、小学生以下無料。会場では毎日13時と15時から、作品を作者が解説するギャラリートークが開かれる。


写真展の計画は1年以上前にスタート

三越本店新館7階の会場入口
 三好さんがハワイを撮るのは、もちろん初めてではない。およそ30年前から、これまでに40回以上はこの地を訪れ、撮影してきている。が、写真集、写真展としてまとめて発表したことはなかった。「1年ほど前に、今回の写真展の計画が始まったときに、ハワイをやってみようと思いました」。

 この会場は通常のメーカーサロンの3倍以上の広さがあり、写真展には100点以上の作品が必要になる。最初は、いままで撮りためた作品を半分ぐらい使って構成しようと考えていたそうだ。

 それが、今回の写真展のために初めて行なったロケで、これまでと違うハワイに出会った。それが古代フラ(古典フラともいう)だ。「この踊りを見たとき、これでいけると思った」と三好さんは言う。早い段階ですべて新作でいくことに決め、ロケは2006年11月から今年4月までの、およそ半年をかけて行なわれた。

 ハワイアンの祖先は1,500年ほど前、カヌーでこの島に渡ってきたといわれている。「古代ハワイアンは神を敬い、自然は恵みであり、人はそこから与えられるものと考えていた。それが、1778年に英国の探検家、ジェームズ・クックの一行がやってきて、キリスト教が入ってから変わってしまった。自然は支配するものになってしまったのです」。


「こんなによく写った写真はない」と三好さんが自賛する1枚。Sonnar T* 135mm F1.8 ZAでダンサーの1人を撮ったもので、彼らの踊りが、今回の三好さんの制作イメージを決定づけたのだ
(左写真の左)若きフラの指導者、ベント・スノ−バードさん。撮影においてはこうした導かれるような偶然の出会いが必ずある

 男女ともに上半身裸で踊る古代フラは淫らなものとして禁止され、ハワイ語も話すことを禁じられた。それが最近、ハワイアンの中でも、かつての自国文化を見直す動きがあり、そこに三好さんの動きが合致したのだ。「ただこれまで何十回もハワイに来ていた中で、まったく見ていなかったわけではない。眼には入っていても、見過ごしてきたことも少なくなかった」と三好さんは振り返る。

 古代フラは、一般的に知られているフラダンスとまったく異なり、激しいリズムと動きが特徴だ。ダンサーの踊りは、次第に波の動きに同調していく。「初めてその踊りを見たとき、虹が空に現れた。たんなる偶然かと思ったが、結局、古代フラの撮影4回中、3回虹が出ているんだ」。

 彼らは虹が出そうなときに踊るのではなく、彼らが踊るから虹が出ると三好さんは言う。さらにこの撮影では、三好さんの腕時計が止まってしまったり(1週間前に電池を交換したばかり)、スタッフが撮っていたデジタルカメラの画像がまったく写っていなかったりと、不思議な体験もしている。


ハワイでは虹が重なって出現するダブルレインボーも見られる 写真展の最初に並ぶ古代フラのダンスシーン

古代ハワイアンが眼にした光景を探る

 その古代フラとの遭遇で、ハワイをどう描いていくかのコンセプトが見え始めた。古代ハワイアンが眼にした自然を調べ、想像し、探して再現することだ。「たとえば駐車場からほんの100mほどしか離れていない場所に、ジャングルが存在するんです。面積は小さいですが、ハワイ島の各所に点在する。僕は屋久島を10年かけて撮ってきましたが、これを見たとき、その苦労はなんだったんだろうと思わされましたね。それほど素晴らしい自然があったんです」。

 またハワイ島には世界最大の活火山であるキラウエア火山がある。これまでその存在は知っていても、行こうと思わなかった場所だ。「歩いて3時間ほどの場所で、そこは原初の地球そのもの。三脚を立てていてもブレてしまう。それは地下に溶岩が流れていて、地表が揺れているんです。ものすごい地熱で熱いし、恐怖で身がすくみます。撮影は午後3時から日没ぐらいまででしたが、帰ったら登山靴の底が朽ちてはがれてしまいました」。

 神の島、火の島、水の島、鳥の島、そして花の島であるハワイが見えてきたのだ。


駐車場から100mほどの場所にあったジャングル。観光客も誰も足を運ぶ人はいない場所だ
ハワイには世界最大の活火山、キラウエア火山がある

サイバーショットは4×5カメラと共通した使い勝手だ

ソニーが開発したSXRD液晶プロジェクターはHDTVの4倍を超す解像度885万画素という。そこに映し出される世界は、プリントとはまた違う感興をもたらす。ちなみにシステムの参考価格は2,700万円だそうだ
 撮影はデジタル一眼レフのα100と、サイバーショット DSC-W200ですべて行なったという。写真展の企画が進む中で、プリントで見せるとともに、最先端の映像システムで上映することも盛り込まれていった。

 「プリントはドイツ製キャンバス地に、エプソンのプリンターで出力しました。初めて使う方法ですが、絵画調の雰囲気が古のハワイを想起させる良い表現ができたと思います。そのプリント作品が約100点。それと別に会場内に46型のブラビア10台を設置し、作品を上映するほか、別室で130型のデジタルシネマプロジェクターを使った作品上映も行ないます。総計で作品点数は300点を超します」。

 デジタル一眼レフでは魚眼レンズから600mmまで、10本以上の交換レンズを揃えて撮影した。そうしたレンズシステムのメリットを除けば、使い勝手は「サイバーショットのほうがいい」と三好さんは言う。サイバーショットではファインダーを覗かず、カメラを両手で構え、液晶モニターを両目で見ながら撮影する。

 「4×5の大判カメラで撮る気分で、実に撮りやすい。1,210万画素あるので、α100とクオリティ的に遜色ない。実際、アサヒカメラのグラビアにはサイバーショットで撮ったものを使ったが、まったく上がりは問題なかった。色校正に手がかかるかと心配していたんだけどね」。


幻の鳥、イイヴィ。「このシーンを撮るためにどれだけ歩き、待ったか」と三好さん。300mmレンズで捉えたが、「警戒心が強く、奇跡的に撮れた1枚だよ」と言う 日の出か日没時に稀に見られるグリーンフラッシュ。この瞬間に出くわしたのもスピリチュアルな体験のひとつ。「映画 パイレーツ・オブ・カリビアンにもでてきたけど、あれは合成だったね」と三好さん

 クオリティだけでなく、撮影面でもデジタルカメラが良い効果をもたらしているという。イメージ通りのカットが撮れたかを確認できることと、撮ったイメージを撮影現場で見ることで、撮りたいイメージがどんどん広がっていくのだ。

 今回、写真展のメインイメージにも使い、ハワイロケの重要なポイントになった古代フラの踊りでは、微妙なダンサーの足や手の位置を重視した。「古代フラは動きが速く、フィルムカメラだと狙ったイメージを捉えるだけで満足してしまったと思う。液晶モニターで確認できるから、もっと違うイメージをとどんどん膨らませられたんだ」。

 そうなると、今回のハワイロケのカット数は相当な数になったのではと聞くと「わからないんだ。フィルムだったら1,000本以上かな」と笑う。というのは、三好さんの場合、必要のないカットはどんどん消してしまうからだ。「バリエーションは残すけど、撮影の合間の休憩などに画像を確認して、要らないカットは整理してしまうよ」と、その口調は、皆んなそうなんじゃないのとでも言いたげだった。そして「必要なカットにはロックをかけるんだけど、このかけ方がカメラによって違うんで、1度だけ間違って消してしまったことがある。だけどもう2度とミスはしない」と付け加えた。


森山大道さんも8月に写真集「ハワイ」を刊行予定

このフレームはハワイで現地の木(コアウッド)を使って製作したものだ
 ハワイについては、不思議なことに、最近、意外な写真家がこの被写体を撮影している。街や人をスナップショットで切り取る写真家の山内道雄さんと森山大道さんだ。山内さんは写真集「HOLIDAY」として2005年に刊行。森山大道さんは8月に写真集「ハワイ」として発表する予定だ。

 そしてその森山さんは三好さんが「中学のときに、こうなりたいと憧れた写真家」で、「森山さんのような写真が撮りたくて、高校生のとき、ストリップ劇場にもぐりこんで撮影したことがある」と明かす。

 「森山さんがどんなハワイを撮るのか、すごく興味がある。森山さんもハワイを撮っておられるなら、森山さんと僕でハワイの二人展ができたらいいと思います」と話す。三好さんにとって、この個展は最大規模であり、それだけ自信作でもあるのだ。


新開発のインク(ニッシャOFCインキ)で「これまで出なかったこの海の青が再現できるようになった」という 写真集「ハワイアン・スピリッツ」(会場で先行発売。書店は6月20日発売)、カレンダー「癒しの楽園」、ポストカードも制作


URL
  三好和義
  http://www011.upp.so-net.ne.jp/rakuen/
  写真展情報
  http://www011.upp.so-net.ne.jp/rakuen/spirits.html



市井 康延
(いちいやすのぶ)1963年東京生まれ。灯台下暗しを実感する今日この頃。なぜって、新宿のブランドショップBEAMS JAPANをご存知ですよね。この6階にギャラリーがあり、コンスタントに写真展を開いているのです。それもオープンは8年前。ということで情報のチェックは大切です。写真展めぐりの前には東京フォト散歩( http://photosanpo.hp.infoseek.co.jp/ )をご覧ください。開催情報もお気軽にお寄せください。

2007/06/20 00:06
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