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【写真展リアルタイムレポート】岩合光昭 写真展
「The South's Gentle Song / 南アフリカが奏でる、いのちの讃歌。」

~オリンパス2006年カレンダープレゼントも
Reported by 市井 康延

(C)Mitsuaki Iwago
 今回、取り上げるのは、オリンパスギャラリーで12月15日(木)~21日(水)に開かれる岩合光昭写真展「The South's Gentle Song/南アフリカが奏でる、いのちの讃歌。」だ。初日、会場近くの某所で岩合氏にお話をうかがった。開場時間は10時~18時(最終日は15時まで)。日曜休館。

 また、引き続き12月22日(木)~28日(水)には、一部作品を変え、モンベル渋谷店5Fサロンに会場を移して写真展を行なう。こちらでは12月24日 13時からギャラリート-クを予定している。先着順・予約制なのでお早めに電話を(Tel.03-5784-4005)。こちらの開館時間は10時30分~21時(最終日は15時まで)。


オリンパスギャラリーは小川町交差点のすぐそば
落ち着いた雰囲気のなかに、岩合ワールドが広がる

動物よりも自然に関心

「顔写真を撮らせて下さい」と言うと、さっと会議室のテーブルにあったオリンパスE-500を手に取り、構える岩合さん。サービス精神も旺盛なのだ
 岩合さんというと、「スノーモンキー」や「ホッキョクグマ」といった作品がまず頭に浮かび、世界中の野生動物をモチーフに撮影する写真家とのイメージがあった。この写真展でも、南アフリカに生きる野生動物たちの姿を捉えた作品が並んでいる。が、岩合さんにうかがうと「今もそうですが、もともと動物を撮るつもりはなく、自然に関心があったんです」という。

 岩合さんの父は、動物写真家の岩合徳光さんだ。徳光さんは岩合さんを学生時代から助手として、海外の撮影に同行させていたという。そして岩合さんにとって、19歳のときに行ったガラパゴス諸島が写真家として歩み始める大きなきっかけとなった。

 「大きな自然の中にいられる、自然の中に自分を置けることが何より気持ちよかった。ガラパゴスで、その感動をしみじみと感じたんです。だから撮りたかったのは自然。動物も撮っていますが、それは動物が自然のなかにあるものだからです」。

 その後も、父親の助手として、また個人的に世界を旅して、自然を撮り続けていった。そして写真家としてやっていける自信を得たのがアサヒグラフで始めた連載「海からの手紙」だった。

 「レイチェル・カーソンの『我らをめぐる海』に触発されて、海に生きる動物たちの姿を通し、地球のダイナミズムを写せないかと考えたんです」。

 この企画をアサヒグラフに持ち込み、ゴーサインが出た。連載は3年半続き、これが第5回(1979年度)木村伊兵衛賞に選ばれた。岩合さんの本音では、そのとき、アサヒグラフからの取材費を期待していたという。が、残念ながら出なかった。それで銀行からお金を借りて、海外取材に出かけたのだ。ちなみにそのときの借入額は500万円ほどだったという。
 「この撮影から、考えながら写真を撮るようになりました。それまではただ何も考えずに撮っていた、自分の視点が定まっていないことがわかりましたね」。

 撮影に行く前には、被写体やそのテーマについて研究していくわけだが、現地に行くと、必ず学んだこととは違う現象が起こっている。そこで疑問がわき、観察していくことで、撮るべきものが見えてくるのだ。

 「写真は不思議だと思います。シャッターを切る人がどこを見ているか、写真を観ると伝わるんです。だから大きな動物がいた、動物の親子がいた。それだけで撮っても、観る人の心を動かす写真にはならないんですね」。


猫撮りにも1週間

会場内ではモニターで岩合さんのインタビューも上映
 現在、岩合さんは雑誌「猫びより」で、日本全国の猫を撮影し、発表しているが、その撮影の最初は、訪れた町を感じることから始めるそうだ。そこにある建物、地形、住む人、食べ物、流れる川を観察する。

 「その町に吹く風を知ろうとする、カッコ良い言い方なんですがね。読者は猫マニアの人が多く、猫写真には眼が肥えている。毎回、撮影はプレッシャーの連続です。連載当初はロケは2~3日で済んでいたんですが、もっとよい写真をとの思いから、今は1週間に伸びてしまっているんですよ」。

 被写体が野生動物でも、身近な猫でも同じなのだ。

 「海からの手紙」のあとは、食物連鎖をテーマにアフリカに渡った。このときは家族を連れて1年8カ月滞在した。ロケ地の選定には、かつて海外を撮影して周ったときの経験が生きている。

 「雨が降って、草が芽生える。それを食料とする動物がいる。このテーマを写真としてもっとも効果的に見せられる場所として選びました」。

 岩合さんはこうした取材に出かける前には、週刊誌や月刊誌に企画を持ち込み、連載を決めてから出発する。企画に魅力があり、撮影テーマが練られているからこそ、編集者を説得できるプレゼンテーションができるのだ。この点も、岩合さんが多くの人を感動させる写真を生む理由のひとつだと思う。

 手つかずの自然が残る場所として、北西ハワイ諸島を被写体に選んだときには、アメリカ政府からスチール写真の使用許可がおりなかった。商業行為を前提にした撮影はノーというのだ。

 「そこで自然保護団体の仕事にすれば作品が発表できると考えました。以前から、WWFとはおつき合いがあったので、そのカレンダーを作ることで許可をもらったのです」。

 WWFでは毎月、会報誌をだしているが、その表紙の写真を以前から岩合さんは提供してきている。今も継続しており、ずっとボランティアだ。環境保護に少しでも役にたちたい。ただその思いからだという。

 「自然や生命を観察することは、長い時間がかかることだとようやく分かり始めた。ウミガメは40歳になって初めて産卵する。ウミガメの研究者がいうには『私1人では研究は終わらない。孫の代まで引きついでもらって、ようやく一部分が見えてくるでしょう』と。地球温暖化が言われていますが、それが本当かはもう少し時間が経ってみないとわからないのかなと最近、思い始めています。もちろん、人の営みが影響を与えているのは確かなんですけどね」。

 現在、岩合さんが追い続けているテーマは、自然の中の田園、植物と動物の関係、調和だ。花の咲くところに動物も集まってくる。このテーマをどう写真で見せるか。まずはワイルドフラワーが咲く著名なスポットから撮影を始めているところだ。それが今回、写真展で展示した南アフリカであり、カナダ、オーストラリアでも撮影を行なっている。

 「今回の作品は、これまでの作品より緑が多く入っているのがわかると思います」。


(C)Mitsuaki Iwago (C)Mitsuaki Iwago

 あくまでも岩合さんの作品は、自然がメインテーマなのだ。そうして作品を見直すと、動物を主体に観ていたときと、また違ったメッセージが伝わってくる。

 自然の伝え方も、地球規模での視点を少しでも感じてもらおうと、新たな試みを始めている。「ナショナルジオグラフィック・日本語版」では、今月のカレンダーとして、その月の自然の写真を観てもらうために、北半球と南半球の同じ月の自然を並べて見せる。当然、冬と夏の風景が並ぶことになる。多くの人が知っている事実だが、写真でみると、改めて感じる何かがあるだろう。

 「この写真がまとまったとき、地球の丸みが見えてくるといいなと思っています」。

 またFM東京ではレギュラー番組「岩合通信」が始まり、ここでは岩合さんが見てきた地球の今をレポートしている。放送は毎週日曜日の5時30分~50分頃だ。


シーンによってデジタルとフィルムを使い分け

 最後にデジタルカメラについてうかがった。岩合さんがデジタルカメラを使い始めたのは、かなり早い。最初に使ったのはオリンパスのコンパクトタイプだった。

 「最初は140万画素ぐらいのカメラでしたね。だからおもちゃ感覚でしたが、撮った画像をモニターですぐ見られるのは新鮮でした。ビデオをやっていたので、色温度などの知識はありましたから、すぐに使いこなせたと思います」。

 そのコンパクト機でライオンを撮った写真がオリンパスの広告に使われた。そのときは、背景の空が完全にとんでしまい、空のある部分には何も写っていなかった。

 「そのときだけは、空を画像補正して、作り込んでもらいましたね」と笑う。今だから話せるエピソードだ。

 撮影には銀塩とデジタルの両方を持っていくので、機材の総重量は150kgに上る。撮影はそのときどきで使い分けたり、両方を使ったりする。

 「デジタル向き、フィルム向きの撮影シーンはあります。ベタ光だとフィルムはフラットに写ってしまうが、デジタルだと鮮やかな色で撮影できる。逆に微妙な色、光がないところではフィルムの深い表現力が生きます。少し前まではデジタルカメラは逆光に弱かったけど、今はちゃんと撮れるようになりました」。

 要は光の読み方に尽きるわけだ。

 ここで岩合さんに聞いたエピソードを紹介しよう。

 フィルムのムービーカメラを使い続けているフランスの著名な水中映像カメラマンに、なぜビデオを使わないのかと聞いたところ、「ビデオには愛がない」と彼は答えたそうだ。約20年前の話だ。

 映画「皇帝ペンギン」の映像もフィルムで撮影されているが、そのカメラマンにフィルムへのこだわりがあるのですかと尋ねると、「いや違うよ。フィルムカメラなら壊れたとき、現場で自分で直せるからさ」との答えが返ってきた。

 岩合さんは撮影中に、数メートルの滝から滝つぼに転落した。デジタルカメラ「E-1」も一緒に水中に入ったが、陸に上がってシャッターを切ると、ちゃんと動いた。

 「E-1は今ではすごく手に馴染んで、愛着のあるカメラですね」。

 さあ、岩合ワールドへどうぞ。

会期:12月21日(水)まで
休館日:日曜・祝日
開場時間:10時~18時(最終日は15時まで)
問合せ先:Tel.03-3292-1934



URL
  岩合光昭 写真展
  http://www.olympus.co.jp/jp/gallery/opg/2005/opg051215.cfm

岩合氏撮影によるオリンパス/WWFカレンダープレゼント

●応募は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました。

プレゼント応募の決まり(必ずお読み下さい)


  • 当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。
  • 発送は宅配便または普通郵便にて行ないますが、長期不在、受け取り拒否などで未着の場合は当選を無効とさせていただきます。
  • ご応募は日本国内に在住の方に限らせていただきます。
  • ご応募はおひとり様1通とさせていただきます。複数の応募を確認した場合は無効といたします。



 オリンパスの御厚意により、2006年オリンパス/WWFカレンダー「The South’s Gentle Song / 南アフリカが奏でる、いのちの讃歌。」を、抽選で10名様にプレゼントさせていただきます。岩合光昭氏が、南アフリカの希少な野生動物をデジタル一眼レフ「E-1」で撮影した作品で構成されています。

 ご希望の方は下記フォームに必要事項を記入後、送信ボタンを押してください。

 締め切りは12月22日午前12時とさせていただきます。



URL
  カレンダーの詳細
  http://www.olympus.co.jp/jp/news/2005b/nr051003cl2006j.cfm

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市井 康延
(いちい やすのぶ)1963年、東京都生まれ。あの北島商店の肉を食べて育つが、水泳は大の苦手だった。写真とは無関係の生活を送り、1995年から約9年間、フォトギャラリーのスケジュール情報誌の制作に携わる。「写真に貴賎はない」が持論。

2005/12/16 17:45
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