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5月、霧のキングス・キャニオン
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北カリフォルニア、マッカーサー・バーニーの滝へ


写真1
太陽光が差し込んでいる間はほとんど出ていた虹
SD14 / 18-50mm(50mm) / F22 / 1/30秒 / ISO100

※カメラはシグマSD14とキヤノンEOS 5Dを使用。すべてRAWで撮影してからJPEGに現像し、幅1,024ピクセルに縮小しています。
※写真下のデータはカメラ/レンズ(実焦点距離)/絞り/シャッター速度/感度です。
※レンズはすべてシグマ製で、120-300mm=APO 120-300mm F2.8 EX DG HSM、50-150mm=APO 50-150mm F2.8 EX DC HSM、18-50mm=18-50mm F2.8 EX DC Macro、10-20mm=10-20mm F4-5.6 EX DC HSMを表します。


 7月4日、アメリカ合衆国独立記念日の朝、私は北カリフォルニアを目指し、インターステイト・ハイウェイ5(通称I-5)を走っていた。アメリカでは、奇数番号のハイウェイは南北に走ることを意味する。I-5もその例外でなく、南はメキシコ国境沿いから北はカナダ国境沿いまで繋がっている。

 ロサンゼルスからI-5を2時間あまり北上すると、のどかと言うより平らで広大と言った方が的確な世界で最も生産性の高い農業地帯と言われるセントラルバレーが永遠に広がっている(写真2、3)。


写真2
トラックで運ばれるトマト。I-5は農作物を運ぶトラックが頻繁に走る
SD14 / 18-50mm(36mm) / F16 / 1/125秒 / ISO100
写真3
広大なセントラル・バレー
SD14 / 50-150mm(80mm) / F6.3 / 1/500秒 / ISO100

 この週のカリフォルニアは記録的な暑さが続き、山火事が各地で報告されていた。そんな暑い独立記念日の休日にもかかわらず、広大な農場には強い日差しの下で働く人々を見かけた。不法労働者なしではこの広大な農業地帯は成り立たないと言われ、つい最近も不法滞在者に永住の申請権を与えるかどうか論議があったばかりだが、私の見かけた農場で働く人々の中にもメキシコから来た多くの不法労働者がいるに違いない。ここカリフォルニアがメキシコ領土だったことは誰もが承知の事実で、いったい何を持って不法と言えるのかと思ってしまうのは私だけであろうか。


カリフォルニア州、キャピタルビルディング。独立記念日のこの日、人影はほとんどなかった
SD14 / 50-150mm(100mm) / F5.6 / 1/500秒 / ISO100
 ロサンゼルスの自宅から約640kmを走り、カリフォルニア州都であるサクラメントに達していた私は、この日2回目の休憩をこの街でとることにした。独立記念日のこの日、州都としてはけっして大きくないサクラメントのダウンタウンで車から降りると、アスファルトが溶け出しそうな暑さだった(写真4)。

 サクラメントからさらに北上してもこの日の暑さは変わらず、クーラー全開で走っていた私の目に、何か黄色く輝く物が見えたように思え、車の速度を少し落としてもう一度確認するとヒマワリ畑だった(写真5)。

 サクラメント付近からのI-5は、ネイティブ・アメリカンが築いたシスキュー・トレイルを基にしている。このシスキュー・トレイルは、1848年に始まったゴールド・ラッシュから使用頻度が増した。道といってもデコボコで、1日30kmを進むのが限界だったという。今ではこのシスキュー・トレイルをわずか15分で30kmを走ることなど、その当時は夢のまた夢だったに違いない。

 私はさらに北上し、北カリフォルニアで交通の要である都市レディングから299号線に乗換え、のどかな風景の中を東に2時間走り(写真6)、人口2,000人の町バーニーを過ぎ、89号線を北に少し走ると、マッカーサー・バーニー・フォールズ州立記念公園に着いた。ロサンゼルスの自宅から約1,000km、写真を撮るために立ち止まったり休憩もして、約12時間のドライブだった。


写真5
ヒマワリ畑を20分ほど撮っていたら、記録的な猛暑で汗があふれ出て、目を開いていられなくなった
SD14 / 18-50mm(54mm) / F8 / 1/200秒 / ISO100 内蔵ストロボ使用。
写真6
心が和む風景の中を走る
SD14 / 18-50mm(50mm) / F5.6 / 1/500秒 / ISO100

 高さ39mのマッカーサー・バーニーの滝は、サイズとしてはカリフォルニア州最大ではないが、州内で最も美しい滝のひとつと言われている。アメリカ合衆国第26代大統領セオドア・ルーズベルトは、この滝を世界で8番目の不思議と呼んだ。1850年代に定住したサムエル・バーニーと、1800年代に定住したマッカーサー家はこのあたりの土地を所有し、その子孫が1920年代に州に寄付したのが、この公園と滝の名前の由来である(写真1、7~10)。



写真7
公園内に入るとすぐに目に入ってくる光景
SD14 / 18-50mm(23mm) / F11 / 1/100秒 / ISO100
写真8
沢山の地下水も湧き出し、滝となる
SD14 / 18-50mm(40mm) / F22 / 1/4秒 / ISO100

写真9
2本の大きな水の流れが滝をつくる
SD14 / 18-50mm(50mm) / F22 / 1/30秒 / ISO100

写真10
滝の下まで降りられ、滝つぼまで近寄れる
SD14 / 18-50mm(18mm) / F5.6 / 1/50秒 / ISO100n

 私は公園を入るとすぐ左手から滝が見下ろせる展望台で、まずは滝と対面した。そこから曲がりくねった道を降り、ある位置まで来ると急に温度が下がった。それは1mくらいの見えない壁を通り、冷房が効いた別の部屋の中に入った感じで、その1mで温度は真夏と晩秋の差があり、別世界に入ったようだった。私はこの感覚がおもしろくて、何度もこの1mの間を行ったり来たりしてみたが、この見えない滝への入口が、何とも神秘的に感じた。

 滝の下まで降りて滝つぼの近くまで行ったが、流れ落ちる滝の水は、風向きによっては小雨状態の水しぶきになり、身体が濡れてしまった。滝の上のクリークから落ちる水と滝の斜面から湧き出る地下水で、滝つぼの水はとても冷たく、10秒ほど足を水に漬けていると感覚がなくなり、歩行できないぐらいの冷たさだった。

 滝とクリークの回りを歩く短いトレイルも充実していて、何度か歩いてみた(写真11~16)。


写真11
トレイルから滝を眺める
SD14 / 18-50mm(23mm) / F6.3 / 1/80秒 / ISO100
写真12
歩きやすく楽しいトレイルはゴミひとつ落ちていない
SD14 / 18-50mm(18mm) / F2.8 / 1/60秒 / ISO100

写真13
レインボー・フットブリッジ
SD14 / 18-50mm(18mm) / F8 / 1/80秒 / ISO100
写真14
黒い玄武岩で覆われている斜面は、かつてここに滝があったことを物語るそうだが、地球の歴史は私の想像をはるかに超えている
SD14 / 10-20mm(10mm) / F11 / 1/30秒 / ISO100

写真15
滝の上流のバーニー・クリーク。マス釣りが盛んだ
SD14 / 18-50mm(18mm) / F8 / 1/100秒 / ISO100

写真16
滝の下流のバーニー・クリーク
SD14 / 18-50mm(50mm) / F8 / 1/125秒 / ISO100

写真17
公園内では夜7時からパークレンジャーによるスライドショーが行なわれ、このあたりの地質について説明してくれた
SD14 / 18-50mm(50mm) / F4 / 1/8秒 / ISO100
 バーニーの町にはモーテルもあるが、私は公園内にあるキャンプ場にテントを張り、2泊した(写真17)。

 ここを訪れるほとんど人のお目当ては滝を見物することだが、バーニー・クリークが流れ込むブリトン湖もまたすばらしい(写真18~20)。

 このあたりシャスタ・カウンティーは水がきれいなことで知られ、ブリトン湖に身を沈めるとロングドライブと記録的な猛暑で汗まみれの疲れ気味の身体は、瞬時にすきっとして心も身体も洗われた。私は湖で泳ぐことにさほど興味を持っていなかったが、このブリトン湖に出会って、水質のいい湖で遊ぶ楽しさ気持よさを知った。

 この湖の優しい水に身体を浸していると全身の肌が元気になり、全身で皮膚呼吸ができるような気がした。テントを張るとき、転倒してすりむいた傷も湖の水の中にいると、しみるどころか治ってしまった。キャンプ場にはお湯の出るシャワーも完備されていたが、湖で遊び全身の皮膚が潤った後は、あえてシャワーを浴びる気にはならなかった。


写真18
ブリトン湖は、澄んでいて柔らかい水だった
SD14 / 18-50mm(29mm) / F11 / 1/125秒 / ISO100
写真19
公園を出て車で湖の周りを走り、ブリトン湖の北側に行った
SD14 / 18-50mm(20mm) / F11 / 1/125秒 / ISO100

写真20
日没近いブリトン湖でいつまでも遊ぶ子ども。私もしばらく泳ぎ、昼間流した汗と疲れが取れて、生まれ変わった気がした
EOS 5D 120-300mm(186mm) / F8 / 1/2,000s / ISO100


URL
  バックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dialy_backnumber/



押本 龍一
(おしもとりゅういち)東京品川生まれ。英語習得目的のため2年間の予定で1982年に渡米する。1984年、ニューヨークで広告写真に出会い、予定変更。大手クライアントを持つコマ―シャルスタジオで働き始める。1988年にPhotographerで永住権取得。1991年よりフリー、1995年LAに移動。現在はLAを拠点にショービジネス関係の撮影が主。日本からの仕事も開拓中。

2007/08/08 00:00
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